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登攀 小尾十三

ダイヤモンド
日本軍による統治下で朝鮮人は何を思ったか。革命を掲げる者もいれば、この小説に出てくる少年のように、自己と愛国の狭間で揺れ動く者もいただろう。そうした激動の中で、小尾十三という作家は小説でしか訴えられないことにチャレンジしたといえる。もっと言えば、小尾自身の日韓併合における理想の萌芽のようなものを、小説世界に投影したとも言える。
しかし残念なことに、その理想と現実はあまりにも乖離しすぎていた。ゆえに、この小説はいち日本人の幻想の産物に過ぎない、ということに首肯こそできないものの、完全に否定することはそれ以上に難しい、そんな小説になってしまったというのは、まったく皮肉めいた話である。


第十九回受賞作(1944年)
わたしの評価 ★

わたしの印象に残った選評 百五十枚の長さにしては誠実な大問題がひしめき、暗怪に衝突し合う息苦しさの魅力が、度を過ぎて襲来する作品である(横水利一)
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