松本清張が芥川賞なのか、と思う者は少なくないだろう。大衆小説でデビューして、のちに純文学の方にシフトしていく作家がいれば、またその逆もありうるというわけか。
日本で最も権威のある文学賞が大衆小説と純文学に二分されていることもあってか、この二つのジャンルにどう境界線を引くのかということはよく議論されることだ。ただいずれにせよ、わたしは後年、松本清張が『黒革の手帖』などでものにする「嫌な女が幅を利かせる小説」というスタイルがあまり好きではないので、その反動で評価している憾みもあるかもしれない。
第二十八回受賞作（1952年）
わたしの評価 ☆
わたしの印象に残った選評 青空に雪の降るけしき、と形容したいような、美しい文章に感心しました。内容は、無名の文学青年の伝記で、大したものではないのによくまとめてあるので面白い、と見ました。この人は、探求追求というような一つの小説の方法を身につけているようだと分りました（瀧井孝作）
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