小説自体が何処か戯曲的であり、淡泊な文体で好ましい。自らの性に対する堕落に文学という息吹を与えたのか、自らが体験し得ない性そのものを小説で体感したかったのか、吉行自身どう考えていたのかは分からないが、意外にもその思想の両方に沿うような小説である。
奥本大三郎は吉行を「まぎれもなく女性嫌悪思想の系譜に連なる作家である」と言っていたようだが、女性嫌悪思想の持ち主であるからこそ、自身の女性に対する『受容』という希求を小説で表現したかったのではないか。そのようなことをにわかに思わせる。第三十一回受賞作(1954年)
わたしの評価 ☆
わたしの印象に残った選評 私には満足できなかった。吉行君には気の毒だが、この当選作について世評は芳しくあるまいと想像する。しかし当選と定ったからには今後の吉行君の努力、殊に文学態度についての反省を望みたい(石川達三)
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