Himakiji ログイン

忍ぶ川 三浦哲郎

ダイヤモンド
愛する者と向き合う、という純愛のセオリーを押さえた、まあ当時ならヒットするでしょうねという内容(決して悪口というわけではない)の私小説。
この小説を読み終えた時、さながら短編の恋愛映画を一本見終えた後のような清澄さに包まれた。しかしそれだけで大したものだと思う。作中の女性の魅力もさることながら、醜い独占欲や嫉妬心のような濃い要素をあえて映さなかったというのも私小説としては意外に好感が持てる。勿論、小説としての目新しさや野心というものは存在しない。しかし、それでもこの小説は評価されている。これは「古風」とも言われるベタ的要素も、その旨味を余すことなく活用することができれば一流の作品に昇華させられるということの証明だとわたしは思う。


第四十四回受賞作(1960年)
わたしの評価 ☆☆

わたしの印象に残った選評 清純である点に私は心をひかされた。沈痛な感もあるようだ。美しく貧乏することは難しいが、そういう貧乏をまた美しく書いてある(井伏鱒二)
44view 0点 良い 悪い
ページ戻る
コメント0件
コメントを取得中