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鯨神 宇能鴻一郎

ダイヤモンド
巨大な鯨との格闘という題材。呪いのような風習を当たり前に受け入れ、感情のままに立ち向かっていく主人公たちという構図には何らかの寓意が感じられ、純文学的な香気を小説にまぶすことに辛うじて成功している。
それにしても、明確な勧善懲悪の介在しない純粋な追求というものは近年の小説には取り入れられない美しい要素である。そんな清潔な精神を小説世界に投影できる作家がなぜ官能小説家にまで成り下がってしまったのか、これは「賞の功罪」とも言うべき出来事であるように思う。


第四十六回受賞作(1961年)
わたしの評価 ☆

わたしの印象に残った選評 物語性も豊富で、一種の香気もあり、才気ゆたかな作家であるとは思いながらも、容易に私たちが当選を承知できなかったのは、この作品の裏に作者の悲しみも憤りも慨きも、そういうどっしり(原文傍点)とした動かすべからざるものが、何もないような不満を感じていたからではないだろうか(石川達三)
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