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無明長夜 吉田知子

ダイヤモンド
選考委員を務めた舟橋聖一はこの小説を「精神分裂者の幻想小説」と解釈していた。精神分裂症、というのは現代では統合失調症と呼ばれている精神病で、主人公が何らかの精神病に罹患しているのは間違いないだろうが、わたしはこの主人公の飛躍思考を鬱病に近しいものとして解釈した。
その上で、わたしはこの小説に散らばる自虐に、痛切な感情も、儚い衝動も、まったく感じなかった。この被虐的な世界観に何かがあるとするならば、それは通常の想像力を負の方向に傾けた、というようなものでしかない。その身に似合わない煌めきを、黒い風を、この異常な世界に差し出すために、この小説は書かれたのではないのか。いったい、なんのためにこの小説はあるのか。わからなかった。


第六十三回受賞作(1970年)
わたしの評価 ★★★

わたしの印象に残った選評 これが題名通り、人間の苦の象徴と見られるかというと、そうは行きません。かといって、主人公の個性的体験の世界と見るには、作者が読者の方に目を配りすぎていて、中途半端な印象をあたえます(中村光夫)
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