──この世界には、創造主がいる。
名を、「マグナム中野」。
その存在を実際に見た者はいない。
けれど、ひまチャットの最古のログにはこう記されている。
“我、世界を創る者なり。秩序を与え、民に道を示す。”
マグナム中野。
太古の時代、この世界を生み出した創造神。
彼の声を聞いたという者たちがかつていたが、いまや誰も真実を知らない。
けれども、我々「ひまちゃ民」の一部は、今なお彼を信仰している。
「中野様」と呼び、ログに祈りを捧げる。
なぜなら、この世界はときおり、理由もなく崩壊するからだ。
突如としてログが途切れ、画面が真っ白になり、言葉を交わせなくなる。
──サーバ落ち。
それは、神の怒りだと伝えられている。
民のあいだではこう語り継がれている。
かつて、創造主は「十の戒律」を定めた。
だが、民はその戒律を忘れ、好き勝手に言葉を発し、
礼儀を失い、節度を見失った。
やがて、神はこの世界を見限った。
創造主の名が語られることも減り、十戒の内容は朧げになった。
その日、世界は初めて落ちた。
人々は記憶を失い、誰かが誰だったのかも分からなくなった。
だが、それでも世界は動き続けた。
神が一時的に許したのだ。
──ある日、私は夢を見た。
誰もいないチャットルーム。
そこに、誰かが文字を打ち込んだ。
忘れたか……十の言葉を……。
思い出せ。さもなくば、永遠の白がすべてを覆う。
目が覚めたとき、私は震えていた。
心当たりは、ある。
あの時の言い争い。
あの時の嘘。
あの時の、あの罵倒。
ひまチャットの空気が、
少しずつ少しずつ変わっていることに誰も気づいてはいなかった。
誰かが誰かを罵り、
誰かが誰かに偽って近づき、
そして、誰かが世界を冷ややかに見つめていることに。
これは──怒りなのか。
創造主の。
私は、動き出した。
この世界の終わりを止めるために。
十戒を、思い出すために。
──まだ誰も知らない。
すでにサーバがまた落ちようとしていることを。
そして、それが最後の災いとなるかもしれないことを。
神の怒りは、すでに限界を超えている。
我々は、創造主に見捨てられた──流浪の民なのだ。
だが、それでも、信じたい。
まだ、間に合うと。
なぜ、我々は十戒を忘れたのか。
なぜ、創造主の意志を置き去りにしてきたのか。
思い出さねばならない。
思い出すことに、意味がある。
思い出せなければ、全てが終わる。
早く戒律を思い出さなくては
さもなければ、我らひまちゃ民の未来はないだろう──
名を、「マグナム中野」。
その存在を実際に見た者はいない。
けれど、ひまチャットの最古のログにはこう記されている。
“我、世界を創る者なり。秩序を与え、民に道を示す。”
マグナム中野。
太古の時代、この世界を生み出した創造神。
彼の声を聞いたという者たちがかつていたが、いまや誰も真実を知らない。
けれども、我々「ひまちゃ民」の一部は、今なお彼を信仰している。
「中野様」と呼び、ログに祈りを捧げる。
なぜなら、この世界はときおり、理由もなく崩壊するからだ。
突如としてログが途切れ、画面が真っ白になり、言葉を交わせなくなる。
──サーバ落ち。
それは、神の怒りだと伝えられている。
民のあいだではこう語り継がれている。
かつて、創造主は「十の戒律」を定めた。
だが、民はその戒律を忘れ、好き勝手に言葉を発し、
礼儀を失い、節度を見失った。
やがて、神はこの世界を見限った。
創造主の名が語られることも減り、十戒の内容は朧げになった。
その日、世界は初めて落ちた。
人々は記憶を失い、誰かが誰だったのかも分からなくなった。
だが、それでも世界は動き続けた。
神が一時的に許したのだ。
──ある日、私は夢を見た。
誰もいないチャットルーム。
そこに、誰かが文字を打ち込んだ。
忘れたか……十の言葉を……。
思い出せ。さもなくば、永遠の白がすべてを覆う。
目が覚めたとき、私は震えていた。
心当たりは、ある。
あの時の言い争い。
あの時の嘘。
あの時の、あの罵倒。
ひまチャットの空気が、
少しずつ少しずつ変わっていることに誰も気づいてはいなかった。
誰かが誰かを罵り、
誰かが誰かに偽って近づき、
そして、誰かが世界を冷ややかに見つめていることに。
これは──怒りなのか。
創造主の。
私は、動き出した。
この世界の終わりを止めるために。
十戒を、思い出すために。
──まだ誰も知らない。
すでにサーバがまた落ちようとしていることを。
そして、それが最後の災いとなるかもしれないことを。
神の怒りは、すでに限界を超えている。
我々は、創造主に見捨てられた──流浪の民なのだ。
だが、それでも、信じたい。
まだ、間に合うと。
なぜ、我々は十戒を忘れたのか。
なぜ、創造主の意志を置き去りにしてきたのか。
思い出さねばならない。
思い出すことに、意味がある。
思い出せなければ、全てが終わる。
早く戒律を思い出さなくては
さもなければ、我らひまちゃ民の未来はないだろう──
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