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眠い、疲れたアアア×16

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異常気象

翌朝、目を覚ますと、いつもと違う空気の重さを感じた。まだカーテンを開けていないのに、部屋の中がやけに蒸し暑い。朝食を食べているだけで、額にじんわりと汗がにじんでくる。

「今日、変な天気だよな」

そう言うと、レンが事情を教えてくれた。

「国の気候を管理してるサーバーに、ウイルスが仕掛けられてたらしいんだ。優秀なパーティーが除去はしてくれたんだけど、気候データまでは元に戻せなくて。しばらくは、こういう変な天気が続くみたいだよ」

つまり今日は、暦の上ではまだ夏ではないのに、いきなり真夏のような気温になってしまったということらしい。窓の外を見ると、木々の葉すらぐったりと垂れているように見えた。

「――というわけで、海、行かない?」

ミクの提案に、誰も異論はなかった。むしろ、この暑さをどうにかしたい一心で、全員が二つ返事で頷いていた。

浜辺までは、国の外れから乗合の飛竜車で向かった。座席は木製で、風を受けるたびにギシギシと小さく軋む。窓の外を流れる景色――遠くに見える塔や、下を流れる小川、ゆっくりと動く光の粒――を眺めながら、途中の露店で売っていた氷菓子を買い、みんなで分け合って食べる。冷たさが舌の上でじんわりと溶けていって、火照った体に染み渡っていくようだった。

「悠太、それ美味しい?」

「うん、めちゃくちゃ冷たくて美味い。……ミクの分、溶けそうだけど大丈夫か?」

「え、あ、ほんとだ!」

慌てて口に運ぶミクを見て、思わず笑ってしまう。そんな他愛のないやり取りを重ねているうちに、飛竜車は浜辺の入り口に到着した。扉が開いた瞬間、潮の匂いと、じりじりとした日差しが一気に押し寄せてくる。

海水浴場に着くと、まずは更衣室で着替えを済ませることになった。俺が先に出て、日陰になっているところで待っていると、少し遅れてミクが出てくる。

「お待たせ」

「あ、うん」

いつもと違う装いに、俺は思わずミクの方をじっと見てしまっていた。何を考えるでもなく、ただ視線が動かなかった。

「悠太、ミクのどこ見てるの?」

すぐ横から、レンがにやにやしながら茶化してくる。

「なっ……べ、別にどこも見てないし!」

慌てて視線を逸らしたが、遅かったらしい。

「ほんとかなー?」

「悠太、意外と分かりやすいよね」

リンも笑いながら加わってくる。

「まあまあ、初めての海だし、緊張もするよね」

ルカが取りなすように言うが、その口元もしっかり緩んでいた。

「そういうところ、人間っぽくて可愛いじゃん」

GUMIまで面白そうに乗ってくる。

「お、俺は別に……!」

言葉に詰まっているうちに、ミクだけが不思議そうに首をかしげていた。

「どうしたの?」

その反応に、周りのからかいの声がますます大きくなる。俺は顔を赤くしたまま、話をそらすように砂浜の方へと歩き出した。足の裏に伝わる砂の熱さも、今はちょうどいい言い訳になった。

しばらく泳いだあと、リンが大きな籠を抱えて戻ってきた。

「ねえ悠太、知ってる? これから『パカン割り』やるよ」

そう言いながら、籠の中から丸い果実を取り出す。見た目は丸く、表面には薄い水色と白の縞模様が交互に走っていた。持ち上げると、ずっしりと重みがある。地球の西瓜とは少し違う、この世界ならではの果物らしい。

「パカン割り……?」

「うん。夏になると、海のある地域でよくやるんだ。目隠しして、周りの声だけを頼りに棒で割るの。中の果肉が綺麗な色に割れたら、その年は良いことがあるっていう言い伝えがあってね」

ルカが説明を引き継いでくれる。俺の世界にも、確か似たような遊びがあった気がする――そう思ったが、なんとなく口には出さなかった。同じような文化が、違う世界にもあるという事実だけで、少し不思議な気分になる。

「へえ……じゃあ、俺からやってみようかな」

目隠しをつけると、視界が完全に暗くなった。周りから「もうちょっと右!」「そこ!」という声に導かれながら、棒を握った手を持ち上げ、思い切り振り下ろす。パカンという小気味よい音とともに、果実がふたつに割れた。目隠しを外すと、中から現れた果肉は薄紫色をしていて、断面には細かい光の粒のようなものが微かに散っている。

「わ、綺麗な色!」

「今年は悠太、良いことあるかもね」

ミクが笑いながらそう言うと、周りからも小さな拍手が起こった。分け合った果肉は、思っていたよりもずっと甘い。潮風に吹かれながら味わうその甘さは、この世界に来てから食べたどんな料理よりも、不思議と心に残るものだった。

日が傾き始めても、誰も帰ろうとは言い出さなかった。波の音を聞きながら、他愛のない話を続ける時間が、今はただ心地よかった。
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